帯那の自然と人の優しさに包まれながら、夢に向かう日々。【前編】

デイビッド プルーカさん

Obina Brewing代表

アメリカ出身。61歳。東京の大学で准教授を務めていたデイブさんは約20年前に甲府市下帯那の土地を購入。DIYで自宅をつくり、自宅周辺の土地を整備してホップの栽培を開始。アメリカンスタイルのクラフトビール醸造所「Obina Brewing」を設立し、2022年には初のオビナビールを醸造。醸造所オーナー、醸造家、教育者、農家、DIY建築家として活躍。外国人の奥様と4歳、1歳、0歳の子どもたちと共に、地域の人々と交流を深め、帯那の暮らしを楽しみながら、自身の夢の実現に向け着実に前進している。

静かで自然豊かな場所に暮らしたい。

東京の大学で准教授を務めていたデイブさんは、東京の便利さや楽しさを実感しながらも、豊かな自然に恵まれた地で暮らしたいと思い、甲府への移住を考えるようになったといいます。
「20年ほど前、私は東京の人の多さに疲れ、もっと静かで自然豊かな場所に暮らしたいと思っていました。ですが東京の仕事も大事ですので、東京に通える範囲で良いところはないかと考え、中央線で直接東京まで行ける甲府に住もうと決めたんです。そして静かで豊かな自然に囲まれた下帯那という場所を見つけて、リフォームして使うための古い建物と土地を買い、忙しい時に使えるように東京にもアパートを借りて、シティライフとカントリーライフの両方をスタートしました。私は地域の人たちに協力してもらって米づくりを勉強し、東京の大学の学生たちにここで田植えや稲刈りを教えました。このような教育的なプロジェクトを実践していくことによって山梨で過ごす時間が増えていきました」。教育の場としても帯那を活用するデイブさんの取組は、グリーンビジネスを学ぶ学生たちにとって有意義なものとなり、地域の活性化にも繋がっていきました。

帯那産のホップを使ったクラフトビール
『オビナビール』誕生。【甲府之証 食品部門認定 第18号】

帯那をゼミナールのベースとし、学生たちに農業を教えたりする中で、高齢化や人口減少により農業を続けられなくなったり、伝統的な祭りなどもなくなりつつある現状を目の当たりにしたデイブさんは、どうしたらこの地域をリバイバルさせていくことができるかを考えました。「地域の人々の話を聞いたり、学生たちとも話をする中で、米づくりなど既存の農業では経済的な発展は難しいと感じました。そこで着目したのが『クラフトビール』です。アメリカでは50年ほど前からクラフトビールのマーケットはスタートしていましたが、日本はまだ歴史が浅く、10年ほど前に東京でちょっとしたブームになった程度でした。この地域にはビール醸造に適したとてもソフトで美味しい水があり、ホップを育てられる豊かな土地もあります。またクラフトビールは野菜や果物を入れてつくることもできるので、地域で生産されているイチゴやブルーベリーなどの素材を使うこともできます。

ビール醸造所を設立しクラフトビールをこの帯那でつくろうと決意した時、私は55歳でした。外国人であることや年齢的な問題もあり、資金を工面する大変さはありましたが、たくさんの方々にご協力をいただきながら、私はビール醸造を学び、研究を重ね、夢に向かって進んでいったのです。ビールは『オビナビール』と名付けました。オビナは外国人にも発音しやすいですし、サポートしてくれる地域の人たちにも喜んでもらうことができました」。こうして生まれた『オビナビール』は甲府らしい魅力のある産物として『甲府之証』にも認定されています。

あたたかく迎え入れてくれた地域のみなさんと築いたコミュニティ。

デイブさんは帯那に移住して以来、地域の人々の優しさに触れながら、互いに理解を深め心を通わせていきました。
「私がこの土地を買った当初、地域のおじいちゃんやおばあちゃんが遠くから見ていました。そこで、私は直接皆さんのところに行って『デイブです。私はアメリカ人で、大学の准教授をしています。この建物をリフォームして暮らし、農業の勉強をしたいです』と自己紹介をしました。そうしたらすぐに仲良くなれて、DIYで家をつくっていると、おにぎりを持ってきてくれたりするようになったんです。私も地域のコミュニティに早く入って行けるように、地域の習慣や歴史を知る努力をして、古い家にあった神棚を取るときも神社に行ってお願いしました。日本の文化を大切にしたいと考えたからです。地域の人たちとの絆は深まり、長女が生まれた時には、「この地域で赤ちゃんが産まれたのは何十年ぶりだ」と言って近所の人たちがみんなで喜んでくれました。その後わが家にさらに2人の子どもが誕生し、今では3人の子どもたちは地域の人のことを『じぃじ、ばぁば』と呼んで慕い、遊びに行ったりしています。地域みんなで育ててくれる環境がある帯那は、子育てに最適な場所だと感じています」。

【後編】では、デイブさんから伺った、甲府市に移住を考えている方へのアドバイスや、この地に暮らす魅力などを紹介します。

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