人にも動物にもやさしい動物園として、令和9年度にリニューアルオープンを控える遊亀公園附属動物園の今と未来を見つめて。

秋山多江(あきやま たえ)さん 49歳
甲府市出身
甲府市遊亀公園附属動物園
園長
酪農学園大学獣医学科卒業。小学2年生の時、写生大会で地元の遊亀公園附属動物園を訪れ、ライオンの絵を描いた秋山さん。その際、ある来園者とライオンが気持ちを通わせているように見えた経験がきっかけとなり、ライオンの飼育員になって動物園で働くことを夢見た。さらに動物の病気やケガも治せるようになりたいという思いが芽生え、獣医師を目指すと決めた。大学卒業後は動物病院に勤務し、札幌市円山動物園、埼玉県こども動物自然公園の勤務を経て2010年より遊亀公園附属動物園に勤務。2021年より園長を務めている。
動物好きの少女の心に芽生えた夢が、今の私につながっています。

小さな頃から動物が好きだったという秋山さん。小学生の時に、やっとの思いで犬を飼うことを許されたそうです。大学進学でご実家を離れるまで、散歩も食事も、愛犬の世話はすべて自分でしていたといいます。「子ども時代に犬とじっくり向き合ったのは、良い経験だったと思います。犬を飼いたくても、親から許可をもらえるまで長い時間がかかったので、それが余計に私の動物好きに拍車をかけたのかもしれません」と微笑みます。そんな秋山さんが動物園で働きたいという夢を持つきっかけとなった場所が、今、ご自身が園長を務める遊亀公園附属動物園でした。
「小学2年生の時、写生大会で私がこの動物園のライオンを描いていると、ひとりの男性がライオンに話しかけ始めました。すると寝ていたライオンが起きてその男性に反応したんです。私が驚いていると、『僕は昔、飼育員で、このライオンの世話をしていたから、ライオンも僕のことを憶えているんだよ』と教えてくれました。それがすごくカッコいいと感じて、私もライオンの飼育員になりたいと思ったんです。そこから動物たちのケガや病気も治せるようになりたいと夢はふくらみ、小学校の卒業アルバムに『将来の夢は獣医さんになりたい』と書きました。その夢が今につながっているんです」。
獣医師としての幅広い経験と、ご縁に恵まれ、地元甲府の動物園で働くという長年の夢を叶えた。

「甲府にある私の実家は動物園のすぐ近くなので、毎年動物園の隣にある稲積神社で行われている『正ノ木祭』に行っていました。小学生の私はお祭りをまわる前に必ず神社で『動物園で働けますように…』と、お参りをしていました。そのご利益があったのかなと思っています」と当時を振り返る秋山さん。努力が実り獣医師となった秋山さんですが、新卒当時は遊亀公園附属動物園に獣医師の募集がなかったため、動物病院や札幌市円山動物園、埼玉県こども動物自然公園での勤務を通して経験を積んでいきました。「埼玉の動物園に勤務していたときに、大学時代に甲府で実習をした際にお世話になった飼育員さんから、甲府市の採用試験があると連絡をいただいたんです。無事に採用試験に受かり、私は2010年から念願の遊亀公園附属動物園に勤務するようになりました」。動物病院と動物園では、獣医師の仕事内容も異なる部分が多いと秋山さんは言います。「動物病院に来るのは犬や猫が多く、飼い主さんが日常的に動物の様子をみて体調の異変に気づいて病院に来ます。それに対して動物園は動物の種類の幅が広く、基本的には飼育している職員が異変に気づかなければなりません。また動物園では動物の健康管理だけでなく、情報発信や種の保存(繁殖)、調査・研究まで行っています。動物病院と動物園、どちらの世界も最初は何もできない状態でしたが、諸先輩方が多くのことを教えてくださったおかげで今につながっています。本当に私は恵まれていると思います」。
動物のため、訪れる人のため、職員とのコミュニケーションを大切にしながら園長としての仕事に邁進する日々。

「園長は園の統括的な立場ですので、動物の診療だけでなく管理方針を決めたり、加盟している日本動物園水族館協会の業務など対外的な部分での役割を果たしたりもしています。仕事は多岐にわたりますが、最終的にはすべて動物のためであり、また動物園に来てくださる方への教育普及などにもつながるものです」。そう語る秋山さんに仕事をする上で大切にしていることをお尋ねすると、「動物は嘘をつきません。行動自体が答えというところがありますので、動物が発していることに気づけるようでありたいと思っています。ですが、それは私だけでできることではありません。現場のみなさんと協力していくことが大事なので、コミュニケーションをとることを心がけています」と教えてくれました。たとえ仕事で行き詰まるようなことがあっても「一晩寝れば、翌朝には落ち着くタイプなんです」と明るく笑う秋山さん。そんなふうに自分の気持ちを前向きにしていけるのは、「今私は、子どもの頃からの夢を叶え、動物園で働けているから」だといいます。「辛いことがあったときに、動物園で働けている人生と、働けていない人生どっちが良かった?と考えてみました。そうしたら、子どもの頃から憧れていた仕事に就き、毎日動物園に通えていることを、すごく幸せだと実感できたんです。この動物園で働けていることが私は嬉しいです」と、真っ直ぐに仕事に向き合う秋山さん。現在リニューアル工事中の動物園のこれからについても理想を描き、その実現に向けて邁進しています。
【後編】では、リニューアルによって生まれ変わる遊亀公園附属動物園の魅力や、動物園のこれからを見据える秋山さんの思いなどを紹介します。



